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裏を見せ 表を見せて 散る紅葉


by wanderingpoet
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ドキュメンタリー映画『甲野善紀身体操作術』

古武術とカステラとカツ丼よりトラックバック
甲野善紀先生がドキュメンタリー映画になったそうだ。

甲野先生のくる稽古会や講座には一時期熱心に通っていたこともあり、今通っている稽古会も甲野先生と無縁ではないため、「甲野善紀とは何なのか?」という事は私にとっては多少なりとも整理したいことである。

とりあえず、熱心に通っていた頃、ネットで公開していた日記を読み返してみる。
両方の意味で初心忘れるべからずだ。

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(自分が)実践面で気をつけないといけないことは、軸を立てること(おそらく一番大事なことであると同時に、自分がまだできていないこと)、
手の動きと身体の動きがばらばらにならないこと(言ってみれば腕は体とは別行動なのであるが、あたかも別行動でないように同じ拍子、速度で動かす、わかりづらいと思うが。)
身体の中に力の濃淡をつけない(どこかをふんばって動くのではないということ)ということである。
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と書いてある。

軸を立てる事は重要だが、この時の問題意識から言えば、問題解決の糸口になるのは垂直の体軸を立てることではない。相手との接触から自分に歪みを生じないこと、そして相手の隙間を感じることだ。
それを「軸を立てるというのだ」という意見もあるだろうが、相手との関係から独立した固定的な軸を立てることは関係ないという意味では、この時の自分はいかにも手探りだったと印象を受ける。

二番目の「手の動きと身体の動きがばらばらにならないこと」はこの時は内容もよく実感せず聞いた言葉をただ言っているだけだろう。
だって、体術で自覚的に理解したのはこの時だから。
道具を扱う過程でうっすらと感じていたこともある、それはこの時よりちょっと前のこと、理解の深さと饒舌さは関係ないってなもんである。

三番目に関しては表現できる幅は広がったが、特に理解が深まったわけではない。

こうしてみると、これらの原理原則的なことに関して大きな違いはない気がする。

しかし、稽古会には多少違和感を覚えて、行かなくなる。
これは稽古会に感じた違和感であり、甲野先生個人への不満ではない。

一番大きなことは、私のもっと上達したいという気持ちに応えてくれないということだ。
それは何かを言語化して伝えてくれということとかわかりやすいことを言えということではなく、気持ちとか姿勢の問題であると思う。
これはまさに今の自分が稽古仲間に対して反省しなくてはならないポイントだ。

他の不満は、勘違い、間違い、未熟、癖などに対して、どういう態度で臨むか。
ということである。
稽古の過程に「勘違いを許す」ということでもあるかもしれない。
これも甲野先生への不満ではない。
場への不満である。

一応断っておくけど、私が感じた違和感は私のわがままであり、稽古会の欠点を批判しているわけではない。もっとこうならいいのになという趣向の話と思ってもらいたい。

もちろん甲野先生に感じた違和感はある。
基本的に教えることに興味がない。
今この人が壁を破るためにはどうしたらいいだろうと考える気がない。
それは昔から明言していて、「私は私のやっていることに興味を持ってくれる人が参考になればと思ってやっているので、教えるつもりはない。」というような意味のことを言っているし、実際、これに関しては筋が通っている。

これを批判するのは無いものねだりの駄々っ子みたいなものだ。
やはり、方向性の違いというべきだろう。

逆に甲野先生の魅力とは何かと考えてみると、
それはまさに技だと思う。
厳密な有効性ではなく、アートとしての魅力と考えるべきか。
技をかけられたときの不思議な感覚を楽しむことが出来る。
これって重要なことのように思う。

甲野先生の技を実戦で言うほど役に立たないという点から、悪い意味で「身体マジック」と呼ぶ人がいる。決して見当違いではない。
しかし、いい意味の「身体マジック」があってもよいと思う。
いい意味で身体マジックを戦いやスポーツへの応用できるという可能性もあるが、そういう意味でなくではなく、エンターテイメントということで。

もちろん古武術の技はまったくの遊戯でいいということではない。
でも、甲野先生の稽古会に通っていた頃の私の素直な要求を何の正当化もせずに言うと、そういうことなのかもしれないと思う。

なんだか甲野先生については、あまりまとまらなかったが、何となく自分の方向性は確認できた気がする。

とりあえず、今日はこの辺で。
ここまで書いておいて何だが、映画を見るかどうかはわからない(笑)
by wanderingpoet | 2007-01-09 13:35 | 武道の万理